講師 |
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上住聡芳先生
東京都健康長寿医療センター研究所 |
演題 |
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筋肉の脂肪化・線維化を防ぐ方法の開発
~筋ジストロフィーにおける筋変性抑制に向けて~ |
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筋ジストロフィーは、原因遺伝子(1)の変異(2)によって筋線維がダメージを受け続け、筋肉が衰弱していく病気です。最も患者数の多いデュシェンヌ型筋ジストロフィーを例にもう少し詳しく述べると、原因遺伝子であるジストロフィンの変異により、遺伝子の産物であるジストロフィンタンパクが筋線維の膜に発現(3)できなくなり、細胞膜が壊れやすくなり、筋線維のダメージが進行します。 |
そのため、原因遺伝子のゲノム(4)上での修復や発現回復が根本治療となり、現在、ゲノム編集治療や、エクソンスキップ治療、ウイルスベクターによる遺伝子導入治療などの研究が進められています。しかし、筋ジストロフィーは進行性であり、原因遺伝子の発現を回復させるべき筋線維は繰り返すダメージにより徐々に失われ、脂肪細胞や線維性の結合組織に置き換わってしまいます。即ち、この筋肉の脂肪化や線維化を防ぎ、筋線維を保存することも筋ジストロフィー治療にはとても重要になります。 |
私達は、筋肉の脂肪化・線維化を生み出す元になる間葉系前駆細胞と呼ばれる細胞を発見し、この細胞に関する研究を行っています。本講演では、現在進めている間葉系前駆細胞を標的として筋肉の脂肪化・線維化を防ぐ方法の開発について紹介したいと思います。 |
(1)原因遺伝子:病気の原因となる遺伝子
(2)変異:遺伝子の情報の一部が、本来あるべき情報から変化してしまうこと
(3)発現:遺伝子の情報に従ってタンパク質が作られること
(4)ゲノム:遺伝子情報のこと |
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